小学校中学年の頃⑤
日能研に入塾することができなかった僕は、従兄弟のおばさんの勧めで、四谷大塚系の進学塾に通うこととなった。
記念すべき、塾での最初の授業は算数で、角度についての単元だった記憶がある。
先生は中村先生という、30代ぐらいの眼鏡をかけた女性の先生で、めちゃめちゃ厳しそうな人だった。

教室には約30人の同級生。
僕はこれまで小学校でしか授業を受けたことがなかったため、緊張ですっかり“すくみ上って”おり、先生の言っていることが何一つ頭に入ってこなかった。
また、(予習シリーズという)テキストを読んでみても、ちんぷんかんぷんで全く理解できない。
そんな中、先生は言った。
「じゃあこの角度は何度になるか当然わかりますよね。大丈夫だと思うけど一応聞いてみましょう。では・・・ガクトン君」
なんと、あろうことか、僕が当てられてしまったのである。
しかも、何やら分かっていて当たり前のことを聞かれているらしい。
(だめだ・・・全くわからない・・・)
黙り込む僕。
しかしながら、中村先生は僕が座っている方向とは別の方向を見ていた。
「あれ、ガクトン君?いないんですか?」
どうやら先生は僕の顔を覚えていないらしい。
考えてみれば当然だ、今日が塾で受ける初めての授業なのだから。
しかしながら、僕には1つだけ誤算があった。
それは授業開始直後に回ってきた出席簿の僕の名前のところにマルを書いてしまっていた、ということだ。
「おかしいですね、出席簿を見ると出席していることになってる・・・」
「ガクトン、いないんですか!返事しなさい!!」
2~3分ほど経過。
最初は“くん付け”だった呼び方が“呼び捨て”に変わり、先生が明らかにイラついているのがわかる。
(このまま耐え抜くしかない・・・)
僕は覚悟を決めた・・・が、その直後の先生の発言を聞いてすぐに心が折れた。
「わかりました。ではこれから家に電話してきます。いいですね」
「・・・はい・・・ガクトンです・・・」
僕は弱弱しく手を挙げた。
その直後、教室は爆笑の渦に包まれ、僕は初日にして塾の人気者となったのである。
(もちろん先生にこっぴどく叱られたわけだけどね笑)
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