小学校高学年の頃②
「行ってきまーす」
そう言って、家を出る僕。
目的地は・・・ない。
“2時間50分”
僕はこの時間が経過した後に家に帰らなければならない。
そして、間違っても、家族の人間に僕の姿を見られてはならない。
ぼくは本当はいま“塾に行っているはず”なのだから。
僕は塾に行くのが嫌だった。
真面目に授業を受けていても、先生の言っていることは何一つわからない。
授業中に考えていることといえば「ファイナルファンタジーⅤでどのジョブとアビリティを組み合わせると強いのか」といったことや「ドラゴンクエストⅤでホイミスライムがここまで仲間にならないのはなぜか」といった感じで、ゲームに関することばかりであった。
(塾に行っても時間の無駄だ)
当時、小5のガクトン少年はそう考えた。
だから、ある時、僕は塾に行かないことにした。
塾に行くために乗るバスを目的地で降りずに、終点まで乗ってみることにしたのである。
バスの扉が開き、乗客全員が降りていく。
「終点だよ、降りて」
運転手さんに降りるように促され、扉の外に出る。
そこはこれまでに訪れたことがない街であった。
一気に不安な感情が沸き上がってきたが、同時にワクワクしている自分もいる。
(帰りはバス代がもったいないから歩いて帰ろう)
バスが通ってきた道順を必死に思い出し、家に向かって歩いていく。

約3時間かけて自宅に到着。
まるでRPGゲームをクリアしたかのような達成感を僕は感じていた。
なお、この当時、僕が通っていた塾には、たとえ生徒が欠席したとしても、自宅に連絡がいくようなシステムはなかった。
だから、僕はこの“冒険”を合計20回ぐらい行ったが、結局、親にバレることはなかった。
だが、テストの成績は嘘をつかない。
塾で行われる模試では4科目(国語・算数・理科・社会)とも偏差値は30台。
校内順位は毎回ほぼ“ビリ”という壊滅的な成績であった。
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