大学院生の頃

大学院生となった僕には新たな研究テーマが与えられた。



その研究テーマに関しては日本にある5~6校ぐらいの他大学の研究室がすでに扱っており、論文も発表されているが、いずれの研究室も謎を解明できておらず、手詰まりの状態であった。



要するにかなり難易度の高い研究内容だったわけである。





僕は博士課程(D3)の先輩の指導のもと、まずは基本的な手法を用いて解明を試みたが、有意義な結果は得られなかった。



こうなると、従来の手法は通用せず、独創的な新たな手法を開発する必要がある。




僕は1か月に1~2冊ほど本を購入して、それを読み込んだり、関連する論文を調べて考え抜いたが、研究は思うように進まなかった。



教授や准教授にアドバイスをもらってもダメ、他大学の設備を使わせてもらって実験してもダメ。



僕と同級生のM1の学生は順調に研究が進んでいる感じがして、余計に焦りが募る。






そして夏(7月)あたりから、僕が周りの学生と比較していかに劣っているかを痛感することが多くなった。



学部生の頃はあまり気づかなかったが、大学院生ともなると、みんな能力がずば抜けている。



研究の進捗状況を発表するセミナーでは、何の資料も持たずにホワイトボードの前に立ち、スラスラと難しい反応式を書いていたり、常人には理解不能な高度な理論を適用できることを示し、教授と対等に議論を交わしているのである。

(注)この画像と研究内容は一切関係ありません




考えてみれば、僕は試験をテクニックを駆使することで潜り抜け、学部時代の基礎実験を何もせずにぼーっと眺めていただけの落ちこぼれ学生だ。


僕みたいなゴミ人間が研究をするには荷が重すぎる。





そして、今年はまだ良いとして、来年がヤバい。



僕を指導してくれている博士課程(D3)の先輩は来年卒業するため、いなくなってしまう。


そうなると、僕1人でこの難解な研究テーマに立ち向かわなければならないのだ。






このようなことを頭の中でグルグル考えていると、僕の中でプツンと糸が切れたような感覚になった。






「辞めよう」






こうして僕は教授に大学院を中退する旨のメールを送り、面談後、退学届を事務の窓口に提出したのだった。




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