ニートだった頃②
自宅に戻ると、僕が大学院を中退したらしいという情報が親戚に伝わった。
こうなると、正月やお盆、お彼岸の時期に親戚と顔を合わせる際に面倒だ。
「なんで中退したの?」
「2年頑張るだけでいいところに就職できたはずなのに何で?」
「これからどうするつもりなの?」
このような質問が飛んでくることは確実である。
「大学院の研究レベルが高すぎて僕の力ではどうにもならなかった」
正直にそう話してもいいんだろうけど、それでは格好がつかない。
何でもいい。
とにかく僕には“大学院を中退した理由”が必要だったのだ。
そこで僕は考えた。
(海外の大学院にいこうと思っている、というのはどうだろうか?)
これなら、一応やめた理由として成立するし、将来についてもしっかり考えていることになる。
(よし、これでいこう!)
僕は本屋に行き、TOEFL対策の参考書を買ってきて、英語を勉強している姿を親に見せることを心掛けた。
リスニングやスピーキングの練習も少しずつやってみる。
大丈夫。時間ならいくらでもある。
そんな感じでしばらく英語を勉強していると、だんだん楽しくなってきた。
そして次第に、本当に海外の大学院に行ってみてもいいかな、と思うようになったのである。
そこで、どうすれば海外の大学院に行けるのかを調べてみた。
すると、まず金銭的な問題があることが判明。
例えばアメリカの大学院の場合、出願の際に残高証明書(Bank Balance Certificate)の提出が必要で、当時のレートで約1,500万円の貯金残高が要求されていた。
僕は奨学金を借りて大学を卒業した身分であり、すでに借金まみれである。
到底1,500万円もの大金を用意できるはずはない。
そして、その他にも英語力の証明や、詳しくは覚えていないが、細かな入学条件が多々あり、僕の場合、その条件を満たしていなかったのである。
ダメもとで大学に問い合わせてみるか・・・というわけで、本屋で“英文ビジネスeメール実例集”という本を買ってきて、それを参考にメールを作成。

アメリカの大学(たしかカリフォルニア大学)にメールを送ってみたのだが、やはり「あなたは条件を満たしていません」という内容の返信メールが送られてきた。
これで僕の心は完全に折れ、アメリカの大学院にいく、という計画はあっけなく破綻。
英語の学習に対するやる気も一気になくなり、完全なる“ニート”がここに爆誕したのであった。
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