大学入学前の時期
国立大学の合格が判明した後、(記憶が定かではないが)合格者を対象とした説明会があった。
そこで、今後のスケジュールや大学生活についての簡単な説明を受けることになる。
(僕は本当に合格したんだ)
ようやく実感がわいてきた。
その日はホテルに宿泊し、翌日。
僕と母親は大学側がお勧めしていた“学生寮”の見学へと向かった。
なぜ一人暮らしではなく、学生寮(下宿)なのかというと、単純にお金がないからだ。
僕は私立中学・高校出身ではあるが、うちは決して裕福な家庭ではなく、むしろ貧しい方であった。
当然、大学の学費や生活費は奨学金を借りてやりくりする必要がある。
安くて大学に近い寮はすぐに埋まってしまうため、寮の中を見学させてもらった後、その場で契約を行った。
その後は東京に戻って、入学手続き書類の提出や、学費の振り込みを行い、ようやく一息つくことができた。
とはいえ、3月の下旬には東京を離れなければならないため、あまり時間はない。
・・・そういえば、中学・高校の頃の親友だった“野田くん”は元気だろうか?
僕は野田くんの自宅に電話をかけてみた。
「もしもし、野田です」
間違いない。野田くんの声だ。
僕は大学に合格したことを伝えると、彼は言った。
「やっとかよ!」
こんな感じで、彼と話をすることができ、話の流れで「居酒屋で飲もう!」ということになった。
ちなみにこの時点で僕は20歳になっていたため、お酒を飲むことはできる。
(※成人式はこの年の1月に行われたが、僕は受験があったこともあり不参加)
数日後、新宿駅で“野田くん”と、同じく同級生だった“加藤くん”の2人と待ち合わせをして、居酒屋に入った。
その際にまず驚いたのが2人の風貌の変化だ。

野田くんは少し髪を伸ばしていて金髪に、加藤くんは茶髪になっていた。
そして酒を飲みつつ、たばこまで吸っている(この当時はまだ飲食店での喫煙は普通だった)
(たった2年間でここまで変わってしまうものなのか・・・)
僕は戸惑っていた。
というのも、彼らに起きていた変化は風貌だけではなかったからだ。
野田くんは言った。
「加藤、恋バナ聞かせてよ」
僕が知っている野田くんと加藤くんはゲームの話をいつもしていて、恋愛の話なんてするような人間ではなかった。
(僕と彼らとでは、もはや住んでいる世界が違うのかもしれない・・・)
そう感じたことをはっきりと覚えている。
これはもう話についていけない、と判断した僕はとにかく酒を飲みまくった。
2時間ほど居酒屋に滞在した後は、カラオケ店に移動。
彼ら2人は楽しげに流行の曲を歌っていたが、僕は1曲も歌わなかった。
というのも僕は今日生まれて初めてカラオケ店に入店したわけであり、昔から“音痴”を自覚している僕が人前で歌うことなど、到底できなかったのである。
「ガクトン歌ってよー」
と言われたが、断固として拒否。
正直言って歌えないことは悔しかったが、ここは耐えるしかなかった。
カラオケを終えた僕たちは、夜遅くまで営業しているバーのようなお店に入り、飲み直し。
この時点で僕は意識が朦朧としており、その後の記憶はあいまいで、どうやって自宅まで戻ったのか、はっきりと覚えてはいない。
しかしながら1つだけおぼろげに覚えていることがある。
それは新宿駅で2人に手を振って別れたときの光景だ。
僕はこのとき「彼らとはもう2度と会うことはないだろうなー」と思いながら手を振っていたのだ。
そしてそれは現実となった。
2026年現在、僕は野田くん、加藤くんにこのとき以降、一度も会ってはいない。
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